【事例紹介】PTSDにより就労困難となった被害者の、生活費の確保と後遺障害等級の認定を実現した事例
事案
警備員のC様は、幹線道路の路肩に自動車を一時停車させてカーナビを確認していたところ、後方から脇見運転をしていた自動車に追突されました。衝撃は大きく、C様の車両後部は大破しました。
C様は、頚椎捻挫・腰椎捻挫を負ったほか、事故時の「爆発のような衝撃音」が耳から離れず、注意力散漫になったため、警備業務に支障が生じました。その結果、事故直後から休業を余儀なくされ、数日後には退職することとなりました。しかし、保険会社から十分な休業補償が支給されず、生活が困窮しているとのことで、当事務所にご依頼いただきました。
当事務所の対応
1.損害賠償の仮払い仮処分の申立て
受傷の程度から、C様には後遺障害が認められる可能性はありましたが、症状固定前であり、自賠責の後遺障害等級認定は半年以上先になる見込みであったため、すぐに保険金を受領できる状況にありませんでした。
そこで、当事務所は地方裁判所に対し、損害賠償の仮払い仮処分を申し立てました。
これは、交通事故により生活が困難な場合に、示談前であっても相手方に賠償金の一部を支払わせる裁判手続きです。
ただ、相手方も弁護士をつけて当方の主張を争ってきたため、賠償額の根拠や仮払いの必要性などについて、通常の訴訟手続きと同様に証拠をそろえて主張立証を行いました。その結果、申立てから約2か月半で60万円の仮払いが認められ、C様は当面の生活費を確保することができました。
2.PTSD(心的外傷後ストレス障害)の後遺障害申請
仮処分手続と並行して後遺障害の準備も進めました。C様は事故直後から爆発音が耳から離れないなどの恐怖感を訴えていたため、PTSDの可能性が高いと判断し、基幹病院の精神科専門医を受診していただきました。
診断の結果、頭蓋内爆発音症候群および心的外傷後ストレス障害(PTSD)と診断され、薬物療法が継続されました。一人で外出すると事故の状況がフラッシュバックするなどの症状が、診断書や診療録に記載されていた点が重視され、後遺障害等級14級9号が認定されました。
3.交通事故紛争処理センターでの解決
後遺障害等級の認定後、保険会社と示談交渉を行いましたが、駐車禁止区域に停車していたためC様にも10%の過失がある、休業損害は認められないなどと主張され、当初の提示額は約49万円に留まりました。
そこで、裁判よりも迅速な解決が見込める交通事故紛争処理センターに申し立てました。
当事務所は刑事記録をもとに、加害者が脇見運転をしていた事実を指摘した結果、C様の過失割合は0%と認定されました。
また、当時C様は、当時内縁の夫と同居し家事労働にも従事していたことから、警備員としての休業損害ではなく、兼業主婦としての休業損害を主張しました。主婦の基礎収入は、賃金センサスにより約400万円とみなされるため、C様の年収よりも高額だったからです。そこで、内縁の夫との生活状況や、事故による家事労働への支障などを詳細に記載した陳述書を提出するなどして立証をしたところ、主婦として休業損害および後遺障害逸失利益が認められました。
その結果、あっせん委員から約299万円の和解案が提示され、相手方もこれを受け入れました。当初提示額の約6倍となる金額で和解することができました。
本件のポイント
- 生活に困窮している場合、示談前でも仮払い仮処分により当面の生活費を確保できる可能性があります。
- PTSDは器質的損傷を伴わないため、精神科専門医による診断内容や治療歴が重要になります。
- 事故後の生活費の確保や後遺障害申請に向けた準備は、事故直後から弁護士が関与し、計画的に進めることが重要です。交通事故により生活にお困りの方、またPTSDの症状でお悩みの方は、ぜひ一度ご相談ください。